マッハパンチを打つ筆者

マッハパンチってどのくらいすごい? 音速やソニックブームについて考察

本記事ではマッハ。すなわち音速について解説していきます。

様々なマッハパンチから、シンカリオンの超進化速度まで、幅広く網羅していきますよ。

音についての基礎知識と豆知識

この先をより楽しんでもらうためにも、あくまで物理の授業にならない程度に音についておさらいしておきます。

不要な方はすっ飛ばしてください。

 

音とは、物体(多くの場合、空気)の振動を聴覚で感じるもの。
※物理では縦波(疎密波)である、などと表現しますが難しくなりすぎるので割愛。

音の伝わるスピードは温度や圧力によって変わりますが、地上(の空気中)であれば1秒間で340m進むほどの速さです。

すなわち、340m/s(=時速1,225km)で伝わっていきます。

 

音は振動が伝わるので、伝える物質が無ければ伝わりません。

宇宙空間などの真空だと音が聞こえないってのは、ご存知かもしれませんね。

 

また、伝える物質同士の間隔がギュとしているほど、より速く伝わるということもポイントです。

一般的に、気体 < 液体 < 固体の順で音速は大きくなります。

ちなみに水中の音速は、空気中の約4倍~5倍です。

 

水中で感じる音は、地上とちょっと違う?

ここで雑学(余談?)を二つ。

  • シンクロで使われるプールには、プールの中にもスピーカーがある
  • ダイビングなど水中で物音を聞いただけでは、音源の方向は特定しにくい

このこと、ご存知でしたか?

 

シンクロで使用するプールの中には、地上(観客)と水中(演技者)で聞いている曲がズレないようにプール内に専用スピーカーが設置されています。

また、音が来た方向を認識しているのは、右耳と左耳に届く音のわずかな時間差によって把握します。

しかし水中(の音速)は地上の約5倍なので、両耳にほぼ同時・・・・でやってきます。

そのため時間差を感じられず、水中で聞く音はその方向を特定できません

水中では必ず目視することが重要ですね。

 

マッハと音速は同じ?

さてここで一つ問題です。

音速の英語はご存知ですか?

 

マッハとお答えいただいたあなた。

残念。実は、違います。

音速は英語で「speed of sound」といいます。

 

「マッハ(Mach)」とは、音速を「1」として表した単位(みたいなもの)です。

  • マッハ1≒340m/s(1,225km/h)
  • マッハ2≒680m/s(2,450km/h)

と言う感じですね。

 

そして物体(音源)がマッハ(またはそれに近い速さ)を超えると衝撃波が生まれ、通称「ソニックブーム」が発生します。

彼(ガイル)の鍛え抜かれたその両腕は、音速を超えています。

 

ソニックブームとは、衝撃波が作り出す轟音・・または衝撃波そのものを表します。

仮にガイルが放つソニックブームが本当にソニックブームなら、対戦者は防音対策までしっかりしなくてはいけません。

 

音についてのまとめ

少々音にまつわる講義が長くなったので、簡単に音と速さについてまとめます。

  • 音は、物体の振動が伝わっている
  • スピードは、1,225km/h以上(=340m/s)
  • 振動が伝えられなければ、音は聞こえない
  • マッハ1は音速と同じ
  • マッハを超えると、衝撃波やソニックブームが発生

このあたりがポイントです。

 

それでは、本題の音と速さからアニメを見ていきます。

 

マッハパンチは、想像を絶する速さのパンチ

例えば「グラップラー刃牙」に登場する愚地克巳は、そのパンチが音速を超えるらしいです。

通称マッハパンチですね。

 

マッハパンチの定義は難しいですが、これより先は

拳そのものの速さがマッハ

と定義しておきましょう。

 

ではマッハパンチを繰り出す人がどのくらいすごいのか、ちょっと計算してみましょう。

 

マッハパンチは1秒間に何発撃つ?

一般的に、成人男性の腕の長さは平均で70㎝と言われ、72㎝~75cm前後であることが多いです。

計算しやすくするために、マッハパンチを繰り出す彼らの腕は長い(80cmくらい)と仮定します。

そうするとパンチ1発あたりのこぶしの移動距離は、単純計算で往復1.6m

 

音速(マッハ)は1秒で340m進む速さなので、340÷1.6=212.5となり、こぶしのスピードがマッハとなるためには

1秒で212回ほど打ち込んでいる計算

になります。

拳が1秒間で340m進むためには、212回も往復しないといけません。

 

ちなみにこのように考えられたパンチは、その場を往復する単振動とも考えられます。

そうなると振動数の考えも出てきますね。

 

振動数とは?
1秒で何回振動するか? を表した物理量。単位は「Hz(ヘルツ)」。

 

1秒で212回振動していると考えれば、マッハパンチは212Hz。

音階の基準(調律などで用いられる音の高さ)である「ラ」の振動数は、440Hz。

1オクターブ低いラの音が、220Hzです

 

ということはですよ?

マッハパンチを繰り出すと(ほぼ)低い「ラ」を奏でながら、相手をシバくということになるんじゃ…。

ただし。

音速を超えてるためにソニックブーム(轟音)が発生しますから、低いラの音はかき消されるかもしれません。

となると、漫画のシーンのような音が鳴り響くのかもしれませんね。

パパパパンッが正解かどうかはわからないけど。

 

一撃必殺のパンチが、マッハパンチとなるためには?

これまでの説明だと、マッハパンチはもれなく多弾攻撃となります。

しかし中には、マッハパンチが一撃の場合も多いですよね?

さっきの愚地克巳も、一撃しか出さないときありますからね。

 

さっきは1秒を基準に考えたので、212回もパンチを繰り出すことになりました。

では反対に、1発のパンチを繰り出すのに何秒であれば、音速を超えるのか?

逆算すれば求まります。

 

1秒で212回パンチが繰り出されるなら、1回のパンチが繰り出される時間は1/212秒

パンチ1発撃つ時間は、0.0047秒だ

と言うことです。

これは想像を絶する速さです。

 

人間の反応速度は、一般的に0.2秒ほどと言われています。

絶え間ない努力をしているトップアスリートでも、0.1~0.15秒ほどみたいです。

 

脳から神経を伝って各部を動かそうとする時間が常人であれば0.2秒ほどかかるところ、マッハパンチを打つ人たちは常人の42.6倍の速さで動けています。

もう人間とは呼べないですね。

 

こんなにもいる!音速を超えているヤツら

さきほど解説したとおり、音速を超えると衝撃波が発生します。

ということは、動作に際して衝撃波が発生しているものは、もれなく音速を超えている可能性があります。

 

漫画「ワンパンマン」に登場する主人公サイタマが繰り出す「マジ殴り」と言うパンチ。

綺麗な衝撃波が出ていますね。

サイタマもマッハパンチを会得していることがわかりますね。

 

…っとここで、新たな疑問が出てくるぞ。

明らかにされていないけど

あれ? 気がついたら音速超えてるやん!

と言うように、自然と時速1,225kmの音速を超えちゃった人物って、結構いるんじゃないのか?

 

さっそく調べてみました。

この世にありとあらゆる漫画・アニメを網羅することはできないので、私の趣味嗜好により偏りがあるのはご承知おきください。

 

緑谷出久(みどりや いずく)

僕のヒーローアカデミア:主人公 緑谷出久(通称デク)

「更に向こうのステージへ行くため」のヒントを得たシーン。

音速を超え、向こうに行き過ぎましたね、きっと。

彼の場合マッハキックだけど。

 

獣の巨人(ジーク)

進撃の巨人:獣の巨人 (ジーク)

「目指すは、完全試合(パーフェクトゲーム)だ」といって岩(石?)を放ったシーン。

時速161kmで動けるリヴァイですら、その岩に反応できませんでした。

 

獣の巨人の長い腕(約12~13mほど?)も、音速を超えるのに一役かっていそうです。

 

三条加奈子

テラフォーマーズ:三条加奈子 手術ベース「ハリオアマツバメ」

ゴキブリの群れに襲われている仲間たちのもとに、間一髪飛んで割り込んだ女性。

あ、上のイラストじゃゴキブリしか映っていませんでしたね。

こんな可愛らしい人です。

©テラフォーマーズ/貴家悠・橘賢一・集英社

三条加奈子は時速170km~350kmが最高速度とありますが、どう見てもさっきの瞬間は衝撃波が発生しているように見えますよね。

すなわち時速1,225km…。あれ? 限界突破?

火星の環境がそうさせたのかもしれませんね。

 

エヴァンゲリオン初号機

via GIFMAGAZINE

新世紀エヴァンゲリオン:汎用人型決戦兵器「初号機(EVA-01TESTTYPE)」

仲間とともに第8の使徒サハクィエル(敵)を迎え撃つため、初号機に搭乗している碇シンジ(主人公)が、現場へ向かい疾走している場面。

お手本のような衝撃波が出ています。

 

 

009 島村ジョー

©「009 RE:CYBORG」製作委員会

009 RE:CYBORG :島村ジョー(009)

映画『009 RE:CYBORG』で出てくる主人公「島村ジョー」が、迫り来る爆風から逃れているシーン。

確かに衝撃波が出ていますが、個人的には物言い・・・をつけたいです。

 

本来衝撃波は、先頭部と空気との衝突により発生します。

戦闘機などではその後、尾翼などとぶつかることにより再び発生します。

要は、物体と空気が衝突するポイント(部分)がきっかけで、衝撃波が出るんです。

 

しかし、009の場合。

走っている最中の手が交互・・にジョーの前に出ています。

それにも関わらず衝撃波は常に一定と言うのは、どうも理解ができません。

エヴァンゲリオンの場合はきちんと手が後ろに回っていたので、一定の衝撃波の波形で良いと思うのですが・・・。

 

ま、細かいことまではいいか。

気になる方は、高校生となった彼(島村ジョー)をチェックしてみて下さい。

 

衝撃波は観測されないけど、音速を超えているもの

衝撃波が出ていれば、音速以上で動いている。

しかし中には衝撃波の描写が無くても、音速を超えているものがあります。

 

要は、計算上超えているパターンですね。
正確な作画をするなら、衝撃波を描くべきってことだな。

 

シンカリオン(変形前)

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

息子が大好き、シンカリオン

2018年1月より、TBS系列で土曜朝7時から放送されているアニメです。

衝撃波は出てこない(かつ計算も不要)ですが、音速に到達しているシーンが、ほぼ毎回登場します。

 

「はやぶさ」「こまち」「かがやき」など、それぞれの新幹線が巨大ロボ 「シンカリオン」に変身するために必要な速度(=超進化速度)が、まさに音速なんです。

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

実に、通常走っている新幹線の約5倍のスピードが出ている計算です。

通常新幹線は平均時速280kmくらいですからね。

 

ばいきんまん

 

この計算が正しければ、確かにアンパンチを食らったばいきんまんは、音速を遙かに超えています
(この計算によれば、ばいきんまんが飛ばされている速度は24,155km/hとなり、実に音速の約19.7倍に相当します。)

 

ちなみに、空想科学読本でおなじみ「柳田理科雄」さんは

一方アンパンチは、ばいきんまんの乗るバイキンUFOを空の彼方までぶっ飛ばす。
バイキンUFOは、全高も直径も2.4mほどで、推定重量は1t前後。これが視力1の人に見えなくなる距離は8㎞であり、アニメで計ると、見えなくなるまで3.4秒かかっている。すると、バイキンUFOはマッハ6.9でぶっ飛んでいるはず!

引用 空想科学読本WEB

と考察されています。

 

空想科学の考えでいくと、ばいきんまんはマッハ6.9なんですね。
どちらにしても、音速をぶっちぎっているけどな。

 

 

殺せんせー

©暗殺教室/松井優征・集英社

暗殺教室:殺せんせー

(私の知る限り)殺せんせーが衝撃波を出しながら移動しているシーンは見当たりません。

すべて計算上・・・音速を超えていないと達成出来ないことばかり。

 

例えば上の画像のシーンもそうです。

 

ダイラタンシ-現象を説明するべく、ハワイに教え子の中学生2人を(+「律」と呼ばれる兵器も)連れて行くシーン。

ダイラタンシー現象とは?
遅い刺激に対しては液体のようにして振る舞い、速い刺激に対しては固体のように振る舞う現象のこと。

 

このシーンで、抱えられている生徒がこんなことを言っています。

・・・。着いちゃった。
軽く授業をしている間に、ハワイまで!!

 

軽く授業している間と言うのがわかりませんが、仮に20分だとしましょう。

そうすると、ハワイまでは約6400kmですから、速度の計算をすれば19,200km/h

マッハ15.7に相当します。

 

殺せんせーの限界速度の設定であるマッハ20を超えていない辺り、よく出来ていますね。でも衝撃波は必要でした。

 

 

ギルサンダー(とメリオダス)

七つの大罪:ギルサンダー

アニメシーンから求めると、ギルサンダーの投擲はマッハ103を超えます。

投げ返したメリオダスはもっとすごくて、4倍のマッハ400以上…。

 

衝撃波による破壊は見られませんでしたが、計算上は地球を脱出して、宇宙空間に飛んでいけるスピードです。

 

 

本当に音速超えてるか疑わしいキャラクターたち

さきほどは衝撃波が出ていなくても計算する・・・・ことで(または一目で)音速を超えていることがわかりました。

 

では反対に、設定や表現などで音速を超えているような表現があるものの

これ、ほんとに音速を超えてる?

というシーンも、いくつか見つかりましたのでお送りします。

 

可視光(目で見られる光)では衝撃波が見えない可能性もありますけどね。

 

アイザック=ネテロ

©HUNTER×HUNTER/冨樫義博・集英社

HUNTER×HUNTER:ハンター協会第12代会長 アイザック=ネテロ

感謝の正拳突き1万回を繰り返すうちに、たどり着いた境地。

「置き去りにした」って書いてあるけど、衝撃波は観測されず。

 

 

神尾アキラ

テニスの王子様:神尾アキラ 不動峰中学校2年生(当時)

超スピードで走り込んだ勢いを活かして繰り出される、高速スライスショット。

「リズムにのった」結果、調子にものっていた可能性があります。

ベジータのビッグバンアタックと同様、名前負けのような技かもしれません。

 

 

番外編

漫画やアニメじゃないけど、音速を超えているとか超えていないとかで紹介しておきたい2大ヒーロー(シリーズ)を紹介します。

 

仮面ライダーシリーズ

©️2017「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会 (C)石森プロ・東映

この画像は「仮面ライダーアマゾンズ」という、Amazon限定配信の仮面ライダーです。

レビュー記事はこちら。

>>仮面ライダーアマゾンズを見た感想。※ネタバレなし
エムフィル

私にとって仮面ライダーといえば、仮面ライ […]…

 

仮面ライダーアマゾンズに限らず、仮面ライダーはバイクにて移動します。

それらのバイクはもれなく、最高時速400km(サイクロン号)というような、最高速度の設定があります。

 

しかし意外なことに、仮面ライダーたちが乗るバイクのほとんどは、音速を超えません

超えていそうなのに。

 

2018年放送の「仮面ライダービルド」のバイク「マシンビルダー」は、最高時速271kmと随分な安全設計です。

それでも十分速いけどな。

 

中には「仮面ライダーキバ」の「ブロンブースター」(最高速度1,550km/h)のように、音速を超えるマシンも何台かあるんですが、全ライダーのバイクのうち、数台だけです。

問題は次です。

 

ウルトラマンシリーズ

©円谷プロダクション

地球に害をなす怪獣や宇宙人と戦ってくれる正義のヒーロー、ウルトラマン

彼ら(の多く)は地球外に存在する「M78星雲」に属する、地球の60倍ほどの大きさの星「ウルトラの星」からやってきます。

地球外から地球のピンチを救ってくれる、ヒーローたちです。

 

そんな彼らのスケールはすさまじいです。

 

ほとんどのウルトラマンは

  • 身長=40~50m
  • 体重=3万~5万トン

このデータになっています。

 

このスケールが地球外・・・から飛び込んでくると思うと、ゾッとします。

なんで?
だって隕石超えているんだもん。

 

例えば、2013年ロシアに落ちた隕石。

この時(突入前)の隕石ですら

  • 大きさ17~20m
  • 重さ1万~1万3千トン

ですよ?

ウルトラマンの半分以下です。

 

そしてウルトラマンの何が怖いって、ウルトラマンの飛行速度はマッハ5〜20まで出せると言われています。

ちなみにさっきの隕石が落ちてきたスピードは、最大でマッハ56と言われていますが、これは落下による加速もあったからでしょう。

ウルトラマンは落下を利用せずとも、この半分くらいのスピードなら出せるんです。

 

ウルトラマンたちが本気を出したら、常に巨大隕石たちがそこら中・・・・を飛び回っている状態です。

 

登場しただけで敵をやっつけられるとか、すごいぜウルトラマン。

さすがだぜ、我らがウルトラマン!

 

音速とアニメ・漫画のまとめ

うかつに「マッハ」や「衝撃波」などの言葉を使うと、もれなく時速1,225kmというとてつもない速さを超えてしまう可能性があります。

生身でマッハパンチを打とうものなら、常人の40倍以上のスピードに耐えうる体が必要です。

それを絶え間ない努力やポテンシャルだけで可能にしている漫画やアニメのキャラクターたちは、やはりすごいですね。