2019年の大河ドラマのタイトルにもなっている、韋駄天。
この韋駄天という存在、あなたは知っていますか?
そう、韋駄天とはものすごく足の速い神様のこと。
この記事では韋駄天の速さについて、物理的なアプローチで考察していきます。
後半は、ギリシア神話に出てくるヘルメスも登場しますよ。
韋駄天とは、想像を絶するほど足の速い神様である
デジタル大辞泉によると、韋駄天は次のように紹介されています。
増長天の八大将軍の一。仏法の守護神。もとバラモン教の神で、シバまたはアグニ神の子。俗説に、仏舎利(ぶっしゃり)を盗んだ捷疾鬼(しょうしつき)を追いかけて取り返したというので、足の速い神とされ、足の速い人のたとえにされる。
引用 デジタル大辞泉
韋駄天は、大事なお釈迦様の遺骨(仏舎利)を盗んだ鬼を捕まえるべく、一瞬の間に100万kmとも1,000万kmともいわれる長距離を走り抜けた(追いかけた)んだとか。
仮に短く見積もって100万kmであったとしても、一瞬で100万km走った場合の時速はおよそ180億km/hになります。
上記の時速計算では、一瞬を0.2秒として計算しました。
0.2秒で100万kmだから、1秒で500万km。
時速に直せば(3,600秒かければ)、およそ180億km進むことになります。
ちなみに、時速180億kmというのはマッハでいえば、およそマッハ14,400,000。
光の速さの約16.7倍に相当します。
ちなみに光の時速は、10億8千万km/hね。
暗殺教室に登場する殺せんせーでもマッハ20が限界なので、韋駄天様はさすが! といったところでしょうか。
これだけ足が速いと
と形容したくなるのも、頷けます。
まぁ実際に韋駄天のスピードで走ったら、例えばフルマラソンですら0.0000084秒(約100万分の8秒)で駆け抜けちゃうので、ぶっちぎりの優勝ですけどね。
ごちそうさまの由来は、韋駄天だった
物理に関係ありませんが、もう一つ韋駄天にまつわる雑学を。
日本人であれば馴染みのある「ごちそうさま」という言葉。
これも韋駄天が関係しているのだそう。
ごちそうさまを漢字で書くと、「御馳走様」と書きます。
馳走というのは、速く走る、かけずり回るという意味の言葉。
足の速かった韋駄天は、釈迦のためにあちこち駆け回って食材を集めていたそうです。
そこから
という意味となり、(丁寧さと敬意をこめて)「御」と「様」を足して「御馳走様」になったんですって。
しかし、江戸時代の後期からは、贅沢な料理のことを「ごちそう」と表現していた(略していた)らしいので、「ごちそうさま」にも諸説あるかもしれません。
足が速いとされている神様「ヘルメス」と韋駄天ではどっちが速い?
ここで気になったのが
と、いつものくだらない元物理教師としての血が沸いてきたので、調べてみました。
神話と物理は、きっても切れない関係ですからね。
この世にはいっぱい神話があるので、個人的に好きな「ギリシア神話」に絞ってみました。
ちなみに光の速さで移動できるかもしれないゼウスは、除外しています。
私の独断と偏見によって、ギリシャ神話に登場するヘルメスという神様で、韋駄天とスピード勝負をしようと思います。
へルメス(ヘルメース、エルメス)とは?
ギリシャ神話に登場するヘルメスは、足が速い神として有名です。
エルメスはフランス語読みです。
ちなみに、ブランドで有名なエルメスと表記は一緒。
しかしブランドのエルメスは、創業者(ティエリー・エルメス)の名前から来ていますので、神様のヘルメスとはそこまで関係なさそうかな。
ギリシア神話に登場するヘルメスは、旅人・商人の守護神などと言われています。
しかし、生まれて間もない時(生後1日の赤ちゃんのとき)に
- 50頭もの牛を盗み出す
- 近くにいた亀から甲羅を剥いで、楽器(竪琴)を作って音楽を演奏する
など、盗人(詐欺師?)や音楽家などの一面もあるようで、幅広い分野に精通する神様だったのかな。
ちなみに、ギリシア神話をパクっているベースにしているローマ神話では、マーキュリー(メルクリウス)として登場。
聞き馴染みのある人も、多いのでは?
そんな彼が履いている靴は、翼の付いたサンダル。
出典 http://kalotaksidi.blog135.fc2.com/blog-entry-87.htmlこのサンダルを履いて、どこへでも気軽に移動していたご様子。
ヘルメスの足の速さを検証
韋駄天の速さと比べるために、ヘルメスの足の速さをちょいと調べました。
神話(牛50頭を盗む話)を元に、検証してみます。
ヘルメスのお話のポイントは、こんな感じ。
- 住んでいるアルカディア地方から、牛のいるピエリア地方まで移動
- 日没後に出発、夜に到着
- 明け方には戻ってきている
こんなお話です。
当時と現在で交通事情は大きく違うでしょうが、2019年現在のGoogleマップを利用して距離を測ってみました。
©2019Googleマップアルカディア地方からピエリア地方まで、469km。
Googleマップの推奨するルートを徒歩で移動すると、実に片道97時間かかるようです。
普通に歩いてたら、4日かかる距離。
それをヘルメスは、半日足らずで往復しちゃっている。
しかも、帰り道は牛をつれているのに…。
この神話を元に、ヘルメスの速度を出してみましょう。
まずは何時にピエリア地方に到着したか、逆算していきます。
牛の走る速度は個体差が大きいようですが、例えば街中を疾走するという意味で、牛追い祭りを参考にすると牛の時速は16.5km/hだそうです。
参考 パンプローナの牛追い祭り
ただ牛追い祭りだと大勢の人の後ろを牛が追いかけて行くわけだし、障害物が少ない草原などではもう少し速く走れるのかもね。
あと、469kmという長距離を考えれば(走りきるのは難しいだろうけど)マラソンランナーが平均時速20kmほどと言われているので、それよりちょいと速い時速24kmくらいが妥当なラインかも。
神話では歩かせていたんだろうけど、ここはひとつ大目に見て時速24kmで牛が走っていたとしよう。
次に、移動時間。
日没後や明け方という表現が曖昧ですが、「日没=午後5時」「明け方=午前5時」と仮定します。
すると移動時間は、12時間。
469km離れたところから、時速24kmで帰ってくるんだから…。
計算すると時間は・・・約19時間30分。
・・・ん? 19時間30分?
どうしようか。あ、こうしよう!
牛は家畜だよね? それなら馬も似てるよね?
ほら、牛って偶蹄類で馬は奇蹄類だから、似てるっちゃ似ているし。
ということで引き連れていた牛が、馬並みに速く& 後ろ向きに走れたと仮定するしかない。
馬は最高時速が70km/hくらいなので、これで帰り道にかかる時間は約6時間42分。
牛とともに帰ってきた朝5時から引き算すれば、ヘルメスがピエリア地方に到着したのは午後10時18分。
午後5時にアルカディア地方を出発したんだから、往路にかかった時間は5時間18分。
アルカディア地方-ピエリア地方間の距離は、469km。
すると、ヘルメスの移動した速さ(時速)は、88.5km/h。
(うすうす気づいていたけど)意外と遅い。
いや、人間と比べたらもちろん速いよ。
韋駄天は、時速180億km。
ヘルメスは、時速88.5km。
まさに桁違いの速さだったんだね、韋駄天って。
足が速いと有名なヘルメスと比べても、韋駄天の圧勝。
とはいえ、(牛を盗み出した)この時のヘルメスは、生まれて1日経たない赤ちゃんの状態ですから、ガチで勝負したらどうなるんだろうね。
韋駄天にまつわる話、まとめ
本日の内容をまとめます。
- 韋駄天は、最低でも時速180億kmで走れたかもしれない神様。
- 足が速いとされていたギリシア神話のヘルメスと比べて、約2億倍の速さ。
- 韋駄天は、光の16.7倍の速さ。
- 韋駄天がきっかけで、ごちそうさまという言葉が誕生した。
韋駄天様は、ものすごく速かったんですね。
彼なら地球1周は0.008秒、月へは0,079秒でいけちゃうからね。