奈良と言えばシカ、シカと言えば奈良。
あなたは、これまでにシカせんべいをあげた経験はありますか?
こんな経験がある、あなた。
実はシカのお辞儀には理由があり、正しい鹿せんべいのあげ方が存在します。
この記事では、シカの行動についてと、正しい鹿せんべいのあげ方についてお話します。
鹿せんべいの上げ方と鹿のお辞儀について
自然のシカとふれあえるチャンスとして、奈良公園で鹿せんべいをあげる機会は結構あると思います。
動物園でいうところのえさやり体験が、あちこちで楽しめちゃいます。
ちなみに鹿せんべいは、シカにとっておやつ扱いだそうです。
主食ではありません。
たまたま息子を連れて奈良公園に行ったとき、隣の彼も鹿せんべいをあげていました。
実はこの映像に映る彼、鹿せんべいの上げ方がお手本通りでびっくりしました。
動画の30秒から40秒あたりです。
シカは、鹿せんべいが欲しいからお辞儀をしている訳ではない!
鹿せんべいをあげているとき、シカがお辞儀する光景をみませんでしたか?
写真だと、ちょっとわかりづらいかな・・・。
この光景、特に外国人からすると
などと、日本人の礼儀作法を重んじる気質と、シカのお辞儀を同じように評価しているようです。
しかし実際は、全く違います。
シカがお辞儀をしている(ように見える)のは、こっちを威嚇しているのです。
奈良のシカは決して、飼育された動物ではありません。
生まれたての赤ちゃんシカを一時的に保護することはありますが、調教したり訓練したりすることは一切ありません。
ましてや、先人(先シカ?)達が、「頭を下げると、せんべいがもらえるようになったゾ!」ってことを知って、そのDNAが脈々と引き継がれて…なんてことも一切ありません。
シカは、エサほしさに我々を威嚇しているだけなのです。
ですが、
- 愛くるしい目
- 人慣れした立ち振る舞い
- 日本の歴史が詰まった、奈良という土地柄
- シカは神の使い
などという背景を勝手に誤解して、「奈良公園のシカ=礼儀を重んじている」というイメージが、広く定着してしまいました。
鹿せんべいの上手な上げ方
鹿は本来、気性が荒い動物だと言われています。
ついついその見た目にやられて、鹿せんべいをあげるときに
と考えて、鹿せんべいをちょっとずつあげたり、じらしたりしてしまうこともあるでしょう。
しかしちょっとでも間をあけると、シカ達は威嚇してきます。
短気なシカほど、頻繁に頭をさげます。
ってね。
シカは基本、群れでやってくるので身の危険を感じることもあるかもしれません。
そこで今からは「正しい鹿せんべいのあげ方」についてお伝えします。
彼のいいところは以下の通りです。
- 鹿せんべいをあげる際は、一枚丸ごとあげる。
- 無くなった場合は、手のひらを見せる。
これです。
特にもう無いときに、手のひらをみせることは大事なことです。
シカは賢いので、これ以上おやつが無いとわかれば迫ってきません。
そう思ったあなた。
何度も言うように、シカがお辞儀をするのは威嚇をしています。
こちらが弱みを見せると、つけ込まれます。
特に、おなかがすいている場合や発情期(7月から11月)には、気性が荒くなりやすいです。
動画の彼を見てください。
鹿せんべいを欲しがってきたシカに対して、テンポよく鹿せんべいを与え、強気に手のひらを出して無いアピールしています。
動画をよく見るとわかりますが、終盤、彼は残り一枚の鹿せんべいを後ろのシカにあげていました。
目の前にいるシカからすると
と迫ってきそうなのに、間髪入れず強気に手を差し出されたので、簡単にあきらめてしまいました。
シカは隙を狙ってくる
あなたは疑問に思ったことないですか?
と。
これについてはお辞儀と逆なんですが、販売所においてある鹿せんべいを食べないのは、販売員の教育によるものです。
販売員の人が声をかけたり手を鳴らしたりして、販売員がシカに威嚇をしてきました。
それによって
と考えるようになった、と言われています。
しかし、相手は野生動物。
販売所の人がちょっと目を離した隙や席を離れた隙に、簡単に鹿せんべいを奪って食べます。
そう、あくまで奈良公園のシカはこちらの様子をうかがっているに過ぎません。
特に、観光客が少ない平日には(鹿せんべいにありつく回数が減ってしまうので)、販売所の鹿せんべいに手を出すようです。
鹿せんべいをあげる時のポイントと同じで、こちらに弱みや隙があると簡単にやってきます。
気をつけましょうね。
奈良のシカにまつわるお話
ここで少し雑学をご紹介しようと思います。
一般財団法人 奈良の鹿愛護会
ご存知のとおり奈良公園には、シカがたくさん。
奈良公園内だけで約1,200頭のシカが、生息していると言われています。
奈良の鹿は、国の天然記念物に指定されている野生動物です。
- シカはペット
- シカは乗り物
- シカに乗って通勤通学をしている
なんてことは絶対にありません。
ただし、飼育はしていませんが「一般財団法人 奈良の鹿愛護会」という法人が、管理や保護育成、調査研究などをおこなっています。
さっきの生息頭数調査もそうです。
近年
- 観光客を襲う
- 農家の作物を食いあさる
などの被害は増加の一途で、見過ごせない事態となっています。
そのため、市や奈良の鹿愛護会が中心となって、シカと上手に共存していくために積極的な行動をとっています。
早起きは三文の徳と、奈良の鹿
奈良のシカは古くから神様の使いとして、奈良県民は非常に大切にしてきました。
大切にしなくてはならない存在であるがゆえに「奈良の寝倒れ」という言葉があるほどです。
関西の府県のイメージを表す言葉として
- 大阪の食い倒れ
- 京都の着倒れ
はなじみがあると思いますが、奈良も実はあるんです。
確かに、奈良の夜は早いです。
奈良公園付近や近鉄奈良駅付近は、夜20時には多くの店が営業を終了します。
奈良の寝倒れという言葉から
- 奈良人は寝てばかり
- サボり癖がある
- 大仏商法である
(客を待つばかりで、積極的に集客しようとしない。ヤル気がない)
など、どちらかというとネガティブなイメージがあるかもしれませんね。
しかし(古くの、特に奈良公園近くに住んでいる)奈良県民にとって、早く寝なくてはならない理由がありました。
それは、朝に早起きをするためです。
ある朝起きると、自宅の敷地内でシカが死んでいました。
シカは神の使いなので、当然その死体はきちんと葬らなければなりません。
葬儀場所は、興福寺です。
もちろんタダではありません。
葬儀料として、三文(約100円ほど?)かかっていたようです。
このまま放置していたら周りから「神の使いを殺した!」と、誤解されかねません。
でも正直なところ、シカを葬るのに費用もかかるし運ぶ手間もある。
そこで考え出されたのは
- 朝起きて、自宅敷地内にシカの死体が無いかを確認する。
- もし見つけたら、シカを隣の敷地にそっと移す。
ってこと。
そう、昔の奈良人は毎日早朝にシカが倒れていないかを確認するために、早起きをする必要がありました。
そして朝寝坊の家があれば、その家主がシカの死体を興福寺に運び、葬儀料を払って葬ってあげます。
そこから生まれた言葉が「早起きは三文の得」だそうです。
ちなみに言っておきますけど、現代ではまったくそんな事はありませんからね。
あ、でも。
交通事故でシカをはねてしまった場合
と思っている人がいるって、聞いたことがあります。
ひょっとすると「早起きは三文の得」から、この話が来ているのかもしれませんね。
シカを誤ってはねてしまった場合、罰金は発生しません。
奈良のシカは誰かの所有物じゃないので、器物損壊にもあたりません。
大切な命です。すぐに手当をすれば助かるかもしれませんからね。
ただしシカは天然記念物なので、故意にはねたり傷をつけたりすると「文化財保護法違反」となり、5年以下の懲役または30万円以下の罰金となる恐れはあります。
鹿せんべいとシカのお辞儀について、まとめ
奈良公園にきた際、シカにせんべいをあげる機会があるかもしれません。
そんな時、大事なのは
- 一枚丸ごときちんとあげること
- じらさないこと
- 無くなったら手のひらを強気に見せて「もう無いよ。」ってアピールすること
これらを守って、鹿せんべいをあげてくださいね。
ちなみに鹿せんべいをくくっている帯は、証紙になっています。
この証紙は(シカは)食べることができるので、帯ごと与えても大丈夫です。
鹿せんべいの収益は奈良の鹿愛護会の活動資金となり、傷ついたシカの保護などにも使われています。
シカのためにも、あなたの良い思い出のためにも。
是非奈良に来た際は、鹿せんべいを正しくあげてくださいね。