脱毛サロンの破産が多い理由は?返金されない時の対処法なども調査

脱毛サロンの破産が多い理由は?返金されない時の対処法なども調査

近年では、脱毛サロンの破産や事業譲渡が相次ぎ、前払い済みの利用者が被害を受ける事例が目立つようになりました。2023年末の銀座カラー運営会社の破産が大きな話題となり社会問題化しました。こうした脱毛サロンの破産の連鎖の背景には、前受金依存の収益モデル、通い放題プランの未実施債務、広告費の先行投資、需要の変動など複合要因があります。本稿では、こういった脱毛サロンの破産の構造、近年の事例、返金が難しい場合の実務的な動き方、行政機関の利用などについて具体的に解説します。

なぜ破産が多いのか?

基本的な支払い方法として、脱毛サロンは前払い制が主流で、長期コースの代金を先に受け取り、施術は数か月から数年にわたり提供します。売上計上は早い一方、提供前のサービスは未実施債務として将来のコストを伴います。

脱毛サロンの集客は広告依存度が高く、繁忙期前に広告・家賃・人件費が先行しやすい構造です。さらに通い放題の販売比率が高いと、利用が集中した局面で施術枠が逼迫し、返金や人件費圧力が一気に表面化します。帝国データバンクの分析でも、倒産件数は近年増加し、脱毛サロンの通い放題モデルの曲がり角が示唆されています。

前受金と未実施債務の重さ

先述の通り通い放題や長期パックは、契約初期に多額のキャッシュが入る反面、将来の施術義務が積み上がります。拡大期は良いですが、新規契約が減速した途端、前受金で過去の施術原価と固定費を賄うドミノが崩れ、資金ショートへつながりやすいのが弱点です。

値引きキャンペーンで短期的に契約を積んでも、稼働のボトルネックやスタッフ採用難が解消されない限り、未実施債務は軽くなりません。広告を削れば集客が鈍化し、増やせば赤字が拡大するジレンマに陥ると、資金繰りの選択肢は急速に狭まります。こうした構造が破綻の連鎖を招いています。

価格競争と広告依存、金利上昇の影響

脱毛サロンの破産の背景にはさらに、医療脱毛や家庭用脱毛器の普及で、サロン間の価格競争は激化した点も見逃せません。検索広告やインフルエンサーマーケの単価上昇も重なり、獲得コストが粗利を圧迫しました。さらに分割払いや信販スキームでは、割賦販売法や審査強化の影響で資金循環が鈍り、焦げ付き時はチャージバックや抗弁接続でキャッシュアウトが発生することもあります。金利・物価の上昇は家計の娯楽・美容支出を抑制しやすく、通い放題の稼働と解約のバランスが崩れると一気にキャッシュ不足が顕在化します。

近年の事例①:銀座カラー

脱毛サロンが破産した事例として、2023年12月、銀座カラー運営会社が破産開始を決定しました。報道では負債約58億円、債権者約10万人とされ、全店営業停止により予約難や返金不能の声が相次ぎました。背景として、前受金を抱える通い放題型の比率、広告・人件費の負担、提携関係の解消など複数要因が指摘されています。破綻の周辺では、関係会社や提携の行方、会員の救済策の有無が注目されました。大型チェーンの破産は、同業への信用不安を増幅し、長期前払いモデルのリスクを広く可視化しました。

近年の事例②:脱毛ラボ

銀座カラーの前には、2022年8月、脱毛ラボ運営会社が破産手続き開始を決定しました。その背景には新型コロナ禍での来店減、固定費負担、前受金返金の圧力などが資金繰りを直撃し、約3万人の一般消費者に影響が及んだと伝えられました。施術未消化の会員は、破産によって一般債権者となり、全額の回収は困難。店舗閉鎖に伴うカルテ移管や照会先の不在など、実務上の混乱も生じました。以降の業界では、前払長期コースへの依存度を下げる議論が強まりました。

近年の事例③:キレイモの事業譲渡と余波

先述二つの破産のケースとは異なりますが、運営会社の信用不安を背景に、2023年に全国28店舗の事業がミュゼに譲渡されるなど、破産回避のためのリストラクチャリングが進みました。事業譲渡は一部の店舗・契約の救済にはつながる一方、既存の前払い契約の取り扱いが統一されず、返金や通い先の案内が錯綜しやすいのが実務上の課題です。利用者側は、譲渡先での引継ぎ範囲、施術単価の変更、返金窓口の明確化を自力で確認する必要がありました。譲渡が万能の救済にならない点は要注意です。

返金されない時の対応

返金されない時には、まず契約書、申込書、領収・明細、予約履歴、やり取りのスクショを一式そろえ、時系列を作成します。休業・閉店・破産の掲示や公式告知も保存。支払い手段がクレジット分割なら、カード会社へ抗弁書面の受付可否を確認し、割賦販売法の抗弁接続が使えるか判断します。信販契約の場合は信販会社へ同様に照会。併せて最寄りの消費生活センターに相談し、特定商取引法や中途解約金の上限、役務提供不能の扱いについて助言を得ましょう。自治体の無料法律相談の活用も効果的です。

行政や公的窓口の活用と詐欺的勧誘の回避

同種トラブルが多発する局面では、自治体や国の注意喚起が出ます。消費生活センターや国民生活センターに相談すれば、事業者へのあっせん、適用法令、返金交渉の文例まで具体指示が得られることがあります。

一方、被害者心理を狙った有料回収代行や高額の法外手数料に注意することが必要です。特に弁護士名を騙る勧誘や、名簿売買を疑う連絡は取り合わず、公式窓口か弁護士会の法律相談から入口を作るのが安全です。近年の脱毛サロンの大型破綻後も、二次被害の報告が散見されました。

まとめ

脱毛サロンの破綻が目立つ背景には、収益構造の根幹でもある、前受金・通い放題・広告依存の三点が重なる脆弱性があります。近年の大型破綻や事業譲渡の発覚によって、長期前払いの危うさを可視化しました。こういった被害を最小化するには、契約書と支払手段の管理、カード会社や信販への早期連絡、消費生活センターの活用が実務的な第一歩となります。基本的には契約前は都度払い可否、解約条項、施術キャパの見える化を重視しましょう。加えて医療脱毛やクリニックの都度払いなど代替も比較し、支払いと受け取りを小刻みにする設計が、生活者の防御力を高めます。